【後編】OSEKKAI salon in 焼津!活動報告レポート

株式会社吉村 橋本久美子社長と橋本隆生さんの対談

2日目のスタートは、株式会社吉村の橋本久美子社長と、次世代を担う橋本隆生さんによる特別対談から。テーマは「人を大切にする経営」「地域に根付く姿勢」「事業承継と次世代の経営観」という、まさに吉村という企業の本質に迫る内容でした。

 

人を大切にする経営とは何か

2005年の社長就任当時、会社はトップダウン文化が色濃く残り、社員を「兵隊さん」と呼ぶ風潮すらあったといいます。そんな中で久美子さんが大切にしたのは、「一人ひとりを大切にする会社へ変える」こと。

社員全員の名前を覚え、誕生日にメッセージを送り、経営者側からも積極的に報連相を行うという、小さな積み重ねが組織の空気を変えていきましたと語ります。

また、セシウム問題をきっかけに「理念は掲げるだけでは意味がない」と気づき、理念を心の基準にする経営へと舵を切ったことも印象的でした。「自分を正解にしない」姿勢を大切にし、論破ではなく対話を通じて社員と向き合う姿勢を紹介。吉村の人を信じ、人を育てる文化が対談全体から強く伝わりました。

 

地域に根付く経営と、焼津で育てられた実感

次は「地域との関わり」がテーマに。隆生さんは8年前に東京から焼津へ移住してきました。当初は「外様だと思われているのでは」と不安もあったそうです。

しかし、地域の人たちから「みんなお前のこと応援してるぞ」と声を掛けられた瞬間、胸が熱くなったと語ります。

焼津PORTERSの立ち上げ、地域プロジェクトへの参加、その背景には、「応援してもらったから恩返ししたい」という強い思いがありました。このように焼津の仲間に支えられ、この先も焼津に貢献していきたいという想いから、事業承継後も本社ではなく焼津で過ごしていくことを決断したそうです。

 

事業承継と次世代の経営観

対談の終盤は、OSEKKAI salonメンバーにとっても関心の高い事業承継のテーマへと移りました。

久美子さんは、事業承継した当初、お父様の影響もあり「社長は正解を言わなければいけない」「弱さを見せられない」と自分を追い込み、自己肯定感が大きく揺らいだ時期があったと語りました。

しかし、長所と短所をひっくり返すように見つめ直し、「自分は自分のままでいい」と思えたことで、経営のスタイルが大きく変化していったといいます。

数字が苦手でも妄想力がある。
社宅妻として消費者目線がある。
国文科出身として心の動き”を察する力がある。

「弱み」と見えていた部分を認め、それを補い合うチームをつくることで、社員との信頼関係が深まっていった、吉村らしい企業文化は、そうした自分らしさを肯定する経営から生まれてきたものでした。

一方、隆生さんは、継ぐことは強制されたことはなく、いつか承継することになるだろうな、というぼんやりとしたビジョンだったと言います。

転機となったのは、久美子さんが体調を崩し、自身の命の有限さを実感したこと。そのタイミングで初めて「継ぐ意思はあるか」と問われ、隆生さんは継ぐことを決めたといいます。しかし、決心した後も会社の事業と自分の価値観の間で迷ったりしたこともあったそうです。

そんな時、周囲から「自分の課題は自分で解決すればいいじゃない」と背中を押されたことで、課題をひとつずつ解消する取り組みを始め、今も試行錯誤しながら前に進んでいるそうです。

親子二人の言葉に共通していたのは、「社員目線で、社員と共に考える」という姿勢でした。また隆生さんは久美子さんから強く影響を受けた価値観として、「クリーンであることは、絶対に引き継がなければいけないと思った」と語りました。

人を信じ、地域を大切にし、理念に基づいて未来をつくる。
吉村の経営に触れたOSEKKAI salonメンバーからは、「企業が長く愛される理由がわかった」「経営観が変わった」といった声も多く上がり、非常に示唆に富む対談となりました。

 

焼津商店街の子ども向けコミュニティ施設・イベントの見学

対談のあとは、焼津駅前通り商店街へ移動し、地域で大切に育まれている「子どもの居場所づくり」の取り組みを見学しました。

「みんなのアソビバ」「みんなの図書館さんかく」「みんなの公民館まる」の3つのスポットは、商店街が子どもたちの遊び場・学び場として機能するように工夫されており、地域の未来をつくる活動として大きな注目を集めています。

なお一部のOSEKKAI salonメンバーは、ここから電動3輪モビリティ「チョイ乗りブル」で移動をしました。風を切って進む爽快感が想像以上で感動の声が続出。乗ったメンバーはみんな大満足で、移動そのものも楽しい体験となりました。

 

みんなのアソビバ

商店街の道路に人工芝を敷き詰め、子どもたちが自由に遊べる空間をつくり出すイベント「みんなのアソビバ」。
ドイツで見た道で遊ぶ文化に衝撃を受けたことから始まったプロジェクトで、商店街の店主や地域の有志が中心となって2018年から続けています。

訪問日はまさに大盛況。子どもたちの笑い声と、家族連れでにぎわう光景が商店街いっぱいに広がり、「道を遊び場にする」という発想が地域にもたらすエネルギーを体感しました。OSEKKAI salonメンバーからも「この光景をうちの地域でも再現したい」といった声が上がっていました。

 

みんなの図書館 さんかく

次に訪れた「みんなの図書館さんかく」は、誰かがサービスを“提供する側・受け取る側として分かれるのではなく、来た人全員が参画者になるという想いをもとにつくられた小さな図書館です。

特に印象的だったのは「一箱本棚オーナー制度」。オーナーが自分専用の本棚を借り、その空間を使って自己表現ができる仕組みで、マンガ、専門書、旅の本など、オーナーごとに個性がはっきり表れていました。

カフェの一角を使った類似の試みは全国にあるものの、図書館単体としてこれを成立させているのは焼津が初めてとのこと。地域の方がふらっと訪れ、子どもが本を借りに来る姿も見られ、まさにまちの文化拠点として機能していました。

 

みんなの公民館 まる

最後に訪れた「みんなの公民館 まる」は、市が運営する公民館ではなく、民間の手でつくられたみんなのための公民館。特に10代・20代の若者を主役として位置づけ、放課後や休日に自由に使える場として運営されているのが特徴です。

1階は広々としたコミュニティスペースで、子どもたちが運動会の打ち上げを開くなど、地域の生活に密着した使われ方をしているとのこと。2階にはコワーキングスペースや中高生向けの勉強部屋があり、まち全体を学びの拠点へと広げていく役割を担っています。

さらに紹介していただいた「地域部活・まるまる新聞」も印象的でした。子どもたち自身が企業へ取材し、記事づくりを行う取り組みで、
「スペースが限られる中で情報を整理する難しさを学んだ」と語る若者もいるなど、実践を通じた学びの場として機能しています。収益を自分たちで生み出す持続可能な部活動という点も、大きな魅力の一つです。

 

自家製ツナ専門店 TUNA LABO 見学

続いては1日目のイベントや交流会にも焼津メンバーとして参加していた関根さんのお店TUNA LABOにも立ち寄りました。関根さんは 自家製ツナの専門店を営んでおり、ここで扱われるツナはすべて、駿河湾で水揚げされたマグロをベースに、天然海洋深層水や数種類をブレンドした独自オイルを使い、丁寧に手作りされています。

店内にはプレーンを含め 12種類のフレーバー が並び、すべて試食してから選ぶことができるという贅沢さ。「国産ツナ缶発祥の地・焼津」ならではの商品で、OSEKKAI salonメンバーも興味津々。試食のたびに「これ好き!」「こっちはご飯に絶対合う!」という声が上がり、終始にぎやかな時間となりました。

私もお土産としていくつか購入しましたが、食べた人々から「次も絶対買ってきてほしい!」と言われるほど大好評。焼津の魅力を味覚からもしっかり持ち帰ることのできる、素敵なスポットでした。

 

焼津港・内港イベントの見学

続いて向かったのは、焼津港の内港で開催されていたイベント。
「内港に“えんがわ”をつくろう」をテーマにしたイベントで、海辺ならではの“にぎわいづくり”を目指した取り組みが行われています。階段状の防潮堤を“えんがわ空間”として活かし、商店街・駅からのまち歩きと組み合わせることで、人が行き交い、滞在したくなる場所を生み出すことがコンセプトです。

会場では、「巨大カツオを描こう」という来場者参加型のイベントも開催されており、港の広いスペースいっぱいに描かれた巨大カツオは圧巻。完成後にはドローンで空撮も行われ、子どもたちも大人も大盛り上がりでした。

そのほかにも、ミニマルシェや音楽ライブなど、多彩なコンテンツが展開されており、海のそばで過ごす豊かな日常をそのまま体感できるイベントとなっていました。焼津のまちが持つポテンシャルと、地域の人たちのチャレンジ精神が形になった取り組みを、メンバー一同存分に味わいました。

 

焼津とOSEKKAI salonがつながった2日間

すべてのプログラムを終え、最後はOSEKKAI salonを代表して山下さん、そして焼津を代表して橋本さんから挨拶をいただきました。

山下さんからは
「また来年、ここ焼津でOSEKKAI salonを開催したい」
という心強い言葉があり、メンバーからも自然と拍手が起こりました。

続いて橋本さんからは、
「今回の動きをさらに大きな渦にしていきたい。ぜひまた焼津に遊びに来てください」
と、地域を代表するあたたかいメッセージをいただきました。

地域の人と企業、そしてOSEKKAI salonのメンバーが共に学び、交流し、新しい気づきを共有した2日間。
参加した誰もが来てよかったと心から感じられる、非常に濃く、充実した時間となりました。

今回の焼津編はこれで一区切りですが、ここから生まれたつながりやアイデアは、これから先も続いていきます。
次回の開催、そしてこれからの新しいプロジェクトの広がりをどうぞ楽しみにしていてください。