OSEKKAIアワード エントリーNo,2 「FLYDプロジェクト」

FLYD(フリュ)プロジェクトは、有限会社安久工機の代表取締役社長兼CEOである田中宙さんが取り組む新規事業です。

安久工機はこれまで、医療機器や研究開発分野における試作開発を支援し、「誰かのつくりたいを叶える企業」として多くの技術開発を支えてきました。しかし田中さんは、「支援する側」だけではなく、自ら価値を生み出す企業へ進化したいという想いから、新たな挑戦をスタートさせました。

今回の事業は補助金も活用して進められており、「やると決めた以上、必ず形にしたい」という強い覚悟のもとで取り組まれています。

 

プロジェクト概要

FLYDとは、デンマーク語で「流体」を意味する言葉です。

このプロジェクトのきっかけとなったのは、安久工機が保有するウォーターベール技術でした。人工心臓の研究開発や流体力学の研究支援を通じて培った技術により、水をベール状に制御して美しく見せることができます。工場見学で展示した際にも来場者から高い評価を得ていましたが、これまではあくまで技術の一つとして保有している状態でした。

そんな中、デンマークのプロダクトデザイナーとの出会いをきっかけに、「この技術をプロダクトとして世の中に届けられるのではないか」という構想が生まれました。

FLYDは単なるインテリアではありません。水の流れや揺らぎ、光、音などを活用し、人の五感に働きかける空間体験を提供することを目指しています。田中宙さんは発表の中で、「暖炉を囲むように、水を囲む文化をつくりたい」と語っていました。ホテルやラウンジなどの空間に設置し、人が自然と集まり、リラックスできる環境を生み出そうとしています。

 

※画像はFLYD開発の原点となったウォーターベール

 

今後の展望

FLYDプロジェクトは、まず北欧市場への展開を目指しています。

田中さんは、日本国内よりも先にデザイン先進地域である北欧で評価を獲得し、その後日本へ展開していく構想を描いています。高級ホテルやラウンジなどへの導入からスタートし、将来的には商業施設やオフィス、さらには家庭向け製品へと展開していく予定です。

一方で、事業化に向けた課題もあります。安久工機はこれまで受託開発を主力としてきたため、自社ブランドの構築やマーケティング、販売体制の整備については新たな挑戦となります。また、海外展開を見据えた素材選定や販売パートナーの開拓も必要です。

質疑応答では、製品の独自性や海外展開について多くの質問が寄せられました。特許ではなく長年培ったノウハウによって実現されている技術であることや、北欧市場を最初のターゲットとしていることなどが紹介され、参加者からも大きな関心が集まっていました。

このプロジェクトは、新しい製品を生み出すだけではなく、安久工機自身が「支援する側」から「価値を創造する側」へ成長するための挑戦でもあります。FLYDプロジェクトが今後どのような形で世の中に届けられるのか、今後の展開が非常に楽しみです。